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■『戦旗』1620号(9月5日)4-5面

 
第26回参院選の評価
 
改憲―戦争攻撃を許すな! 安倍国葬粉砕!
   反帝国際主義で岸田政権を打倒しよう

 
  

                       時田三郎





 七月一〇日の参院選は、安倍銃撃死事件、自公の勝利、改憲勢力が衆参の三分の二以上を保持して国会発議を狙うなど、歴史的な事態を結果した。革命的左派として、今回の参院選を分析評価し、今後の任務、路線的課題、これからの闘いについて、訴える。


●1章 参院選の結果

 安倍銃殺事件の二日後に迎えた七月一〇日の第二六回参院選。その結果は、岸田政権の与党・自公が改選過半数を大きく超えて七六議席となった。自民党だけで改選過半数の六三議席を獲得した。岸田政権にとっては、三年後の二五年の参院選や衆院選まで国政選挙が無く、「黄金の三年」の中期安定政権と報道された。岸田は、とりあえず勝利した。しかも、自公、維新、国民民主の改憲勢力は、参院の三分の二超となる改選八二議席以上の九三議席を獲得した。要するに、四党の改憲勢力が衆参で三分の二以上の議席を握り、改憲を国会発議し、国民投票へ送ることのできる政治状況となったのだ。翌一一日、岸田は、改憲の実現にむけ、「国民の議論をリードし、できるだけ早く発議に至る取り組みを進める」と意欲を示した。さらに改憲に関して秋の「臨時国会では、……与野党全体で一層活発な議論が行われる」と言い放った。日帝―岸田自公政権による改憲―戦争と軍拡への歴史的な反動攻撃が吹き荒れる状況に突入した。米国、韓国、中国などの海外メディアでも、日帝―岸田政権の改憲の行方に注目が集まった。左派勢力および全人民は、歴史的な改憲と戦争の攻撃を断固として阻止していかなくてはならない。
 この参院選について、とらえ返してみる。自民党は、選挙公約で軍事費GDP比2%・改憲早期実現、賃上げの支援策、エネルギー価格・物価の値上げに対する補助金、原発推進などを掲げた。その自民は、選挙前の改選五五議席から八議席伸ばし、単独過半数となる六三議席を獲得した。自民党に追従する公明党は、一議席減らし一三議席。自民党への右からの突き上げ補完勢力である日本維新の会は、公約で自民と同じ改憲、消費税減税、原発推進などを掲げ、六議席から一二議席へと倍増した。与党へすり寄る国民民主党は、緊急事態下の議員任期延長などの改憲、一〇万円給付金、原発推進などを掲げ、七議席から五議席へ減。
 自公と対決する野党筆頭の立憲民主党は、自衛隊九条明記反対と論憲、メリハリある軍備増強、最賃一五〇〇円・消費税減税(この二つは共産党、社民党も同じ公約)、選択的夫婦別姓導入、同性婚の法整備、LGBT差別解消法、原発新増設反対などを訴えたが、二三議席から一七議席へ減った。
 共産党は、改憲阻止、大軍拡反対、賃上げ、選択的夫婦別姓・同性婚・LGBT平等法などを訴え、六議席から四へと減。
 だが、れいわ新選組は、消費税廃止、介護・保育労働者の月給一〇万円アップ、専守防衛・平和外交、原発即刻禁止、同性婚・選択的夫婦別姓などを打ち出し、ゼロから三議席を獲得。
 社民党は、改憲反対、軍拡阻止、原発ゼロ、公衆衛生強化、選択的夫婦別姓・LGBT差別解消法・同性婚などを訴え、比例得票で2・38%を獲得し、現有一議席を守り抜いた。
 また沖縄選挙区では、辺野古新基地建設をめぐって、初めてこの容認・推進をうちだす自民党系候補を破り、絶対阻止とする「オール沖縄」の伊波洋一氏が、二八八八票の僅差で勝利した。
 さらに自公与党や立民・共産など野党勢力と一線を画した現状批判の右派勢力=NHK党と参政党が、それぞれ一議席を獲得。NHK党は改憲の補完勢力である。参政党は、天皇制護持や、外国人から日本国を守るなど差別排外主義、かつ改憲推進であり、クラウドファンディングで資金を集めるなど国民参加型の手法で新たな右派政治勢力づくりに成功した。
 全国で三二ある「一人区」では、立民など野党系は四勝二八敗の惨敗となった。前回一九年、前々回一六年の「野党共闘」候補者一本化の闘いでは、それぞれ一〇勝二二敗、一一勝二一敗であり、負けても各地で接戦を演じたが、これに遠く及ばなかった。
 比例代表では、維新が躍進し三議席増の八で、得票数七八四万票、これは七議席の立民六七七万票とは一〇〇万以上の差をつけ、比例第二党となったが、他の自民、公明、立民、共産は軒並み減となった。比例得票率の第一位(34%)である自民は、前回より獲得比率を下げて一議席減となった。
 七月三日の読売新聞の世論調査では、有権者は次の優先順位の関心事項を示していた。①景気・物価対策(37%)、②年金など社会保障(20%)、③外交・安全保障(14%)、④教育・子育て支援(9%)、⑤改憲(6%)、⑥原発・エネルギー政策(5%)、⑦コロナ感染対策(2%)なのである。
 第二六回参院選の結果は、岸田自公政権が大勝としたと言われ、維新の躍進、立民と共産党の後退、れいわの前進、社民が生き残り、新たにNHK党・参政党が比例得票率2%を満たし政党要件を獲得した。これらの本質的特徴について、次に評価する。


●2章 主な特徴と評価

 第一の特徴は、岸田自公政権は、大勝し、長期政権をめざし、安定化したと言われるが、そうではなく、根底的には脆弱なことである。投票率は過去四番目に低い52・04%だった。有権者の半数近くが投票していない。しかも、比例代表の得票率は、前回より自民も公明も一ポイント減らしている。故に、比例では、それぞれ一議席減となった。
 自民は、その獲得した比例票の中で、一〇代、二〇代、三〇代の若者からの得票が前回よりも6~7%減り、他の年代の得票よりかなり低いことも明らかとなった。貧困と格差が拡大する若者には、自民離れが始まった。自民の業界団体の組織票も、全国郵便局長会など一部に衰えが顕著となった。
 公明も比例の得票が目標よりも一七〇数万票低下し、危機感を深めた。全有権者一億数百万人のうち、自民には17%が投票したに過ぎず、自公でも23%なのである。
 さらに岸田文雄・自民党の最重要公約である「防衛力の抜本的強化」や「自衛隊九条明記など改憲」に対して、有権者の多くは白紙委任した訳ではない。投票者の関心項目において、生活・賃上げ・社会保障よりも、改憲は最低に位置する。事実、読売の投票出口調査では、改憲は関心項目で最低の4・9%の割合だった。各種の世論調査でも、改憲論議は「急ぐべきでない」が多い。
 第二の特徴は、だからこそ、自公と対決する野党勢力が、混迷と乱立・準備不足などで「野党共闘」を後退させ、一人区で大きく敗北し、自公政権の延命と勝利の原因となった。日帝ブルジョアジーとその政治委員会である自民党にとって、昨一一月の衆院選で、自公対「野党共闘」の一騎打ちの選挙区構図が進み、政権交代の危機となったことはぜひとも避けたいことであった。
 先の衆院選とその後、帝国主義労働運動の「連合」は、自民党と波長を合わせ、反共産党を鮮明にし、「野党共闘」崩壊を画策してきた。かりに「野党共闘」で得票を合計すると秋田、福井で逆に勝利し、また参院選全体でも野党側が勢いをもって伸び、激戦区を制するなどの状況もあり得たのである。したがって、日帝ブルジョアジーと自民党は、「連合」芳野会長と連携し、「野党共闘」破壊の工作に成功したことは、今参院選の大きな特徴となった。
 同時に、立民、共産の後退は、その立脚する地域や団体などの足場がいまだ弱く、そしてブルジョア国政議会におけるそれぞれの議会政党としての党派性をもった活動も広く大衆的に浸透させることに不十分さが一因であった。
 立民は、日米安保と自衛隊の支持、日帝の権益死守の路線であるが、「連合」に依拠する。その「連合」自身が自民党へすり寄り、労組単位の動員や力量、政策を大幅に後退させている。立民を支援する市民・住民の諸団体なども、選挙闘争に意欲も活発化も高くはない。岸田政権への是々非々の対応に終始する立民・泉執行部では、とくにそうである。
 共産党は、自衛隊の容認・活用や天皇制の廃止から維持へと転換し、「集団的自衛権行使撤回、共謀罪廃止」など日帝の階級支配体系の一部を改良するブルジョア野党連合政権構想を唱える。日共は、反米愛国主義による日帝擁護へ転落し、中国・朝鮮民主主義人民共和国への排外主義的敵視に立つ。労働組合など大衆団体・市民団体とその運動=実際の階級闘争を強化するよりも、それら人民運動の自己解放の闘いを歪め、議会政党・日共への集票団体・下部組織へと陥れている。
 これら綱領路線の根本問題を抱える日共であるが、東京選挙区では、山添が無党派層に食い込み、徹底的な宣伝を機動的に集中させ、三位当選を果たした。だが、大衆基盤の強化は不十分となっている。労働者人民の自己解放運動の積極性・意欲性・革命性を貫く実践を基本にして、ブルジョア議会とその選挙も活用することになっていないからである。
 第三には、自公与党への不満や批判票が、一定、維新の躍進、そして新興右派の参政党やNHK党など右翼勢力が台頭してきたことである。
 日本維新の会は、大阪などで、新自由主義と差別排外主義・民族主義をもってする反人民的な「改革」で民主的諸権利破壊を進めてきた極右勢力である。部落解放運動や在日朝鮮人・韓国人の闘い、労働運動などが行政闘争・住民闘争によって獲得してきた諸権利に敵対し、それを根本から奪い、地方行政を資本の利権の食い物へと再編する許しがたい反革命右派勢力こそ、維新の本質である。
 自民党を右から突き上げ、補完する勢力だが、反人民的攻撃とくに改憲攻撃では突出して推進する勢力である。これが、比例代表において、停滞する立民を超え、自民に次ぐ第二党の得票を獲得し、全国党への足がかりを築いた。東京、京都、愛知の重要選挙区では敗北し、その途上性も露わとなる。
 参政党が比例で約一七〇万票を獲得し、一議席をとったことは驚きを与えた。この天皇制中心の社会秩序づくりと反外国人の排外主義、そして食糧自給を標榜する新興右派勢力は、SNSを徹底的に活用した。コロナ対策では、「反マスク、反ワクチン」を謳い、非科学的な謀略キャンペーンを行った。戦後体制をGHQの支配と訴え、新手の歴史修正主義であり、戦前天皇制支配を正当化する。参政党への異論や批判などは、トランプばりに全てフェイクとはねつけ、エセ改革性を演出した。そのデマゴギーに満ち満ちた政治展開力の本質はファシスト排外主義勢力といえる。これも、自民党への多くの不満の声を吸収し、とくに若者層が支持した。NHK党も右派改憲勢力を鮮明にして、芸能界暴露のユーチューバー候補が当選した。
 他にも、在日・滞日の朝鮮人・韓国人や移住労働者に対して差別襲撃攻撃を繰り広げてきた在特会が、「日本第一党」を結成し、参院選に登場した。
 第四には、社民党の存続、「オール沖縄」の伊波洋一氏の勝利、れいわ新選組の前進などである。彼らは、日帝―岸田自公政権の改憲―戦争攻撃ならびに新自由主義の格差拡大・貧困化に反対する全人民の根強い抵抗の水路となったのである。
 社民党とその福島瑞穂党首や他候補などに対して、左派労働運動勢力や反差別解放運動、反戦平和、反原発などの市民・住民が支援した。今回、若者の一部も一定、社民党と福島候補を応援するなど、護憲を標榜する社民党はかろうじて生き残った。
 自民党はその改憲攻撃において、最大の抵抗勢力である総評労働運動と社会党を解体するために、新自由主義攻撃である国鉄分割民営化を進め、その中心勢力である国労解体と「連合」結成、さらに社会党の第二保守党化を画策してきた。その経緯からも、社民党の存続や左派労働運動などの粘り強い抵抗闘争は、改憲阻止の大きな歴史的根拠に位置すると言えよう。
 沖縄選挙区での「オール沖縄」・伊波氏の勝利は、辺野古新基地建設阻止―普天間基地撤去を求める沖縄人民の闘いの勝利である。今年が沖縄「復帰」五〇年であり、沖縄解放闘争は日米帝の反革命的統合五〇カ年と対決する重大な節目の渦中にあった。多くの沖縄人民が自己決定権をもって、基地撤去―安保粉砕という日米帝の差別軍事支配粉砕の闘いをこじ開けたのである。さらに九月沖縄知事選や名護市議選など沖縄統一地方選にむけて、玉城デニー知事の再選など「オール沖縄」の勢いをつくることとなった。沖縄解放闘争のさらなる前進にむけ、知事選と名護市議選などに勝利していかなくてはならない。辺野古新基地建設阻止と琉球弧への自衛隊配備強化反対の沖縄―「本土」を貫く闘いを強めなくてはならない。
 れいわ新選組の三議席獲得という前進は、改憲・軍拡の阻止、格差と新自由主義の粉砕、反差別、岸田政権打倒など、全人民的な要求の一定の受け皿となった。党名に元号使用という天皇制擁護の点は到底容認できないが、いっそう国会内外で改憲阻止―岸田政権打倒の全人民的闘いを進めることが求められている。
 最後に、参院選投票の二日前に安倍銃殺事件が起こったが、これは自公与党の参院選勝利への追い風となったことである。事件直後には、自民党も野党諸派なども、「民主主義の根幹=言論・選挙への敵対」など訴えた。自民への「同情」票・安倍追悼票が大規模に起こった。参院選の終盤に向かうなかで、物価高・消費税減税・賃上げなど野党側からの争点が大きく浮上していた。岸田自公勢力の候補を追い上げる一部で成立した「野党共闘」なども中盤には勢いづこうとしていた。新潟など各地の激戦区では競り合っていた。残念ながら、安倍銃殺事件は、一挙に自民党候補勝利のテコとなった。
 極右ファシスト・安倍晋三による反人民性・反動・独裁強権・犯罪の数々は、全人民的な政治闘争や糾弾闘争をもって、断固断罪されなくてはならない。安倍晋三の祖父・岸伸介が、一九六四年に統一教会を日本に招致し六八年に国際勝共連合を設立した。労働者人民解放の階級闘争を敵視し襲撃する反共反革命勢力として強力に活用してきた。
 安倍はその政治系譜から極右派一族の末裔として、統一教会と深い癒着構造を持ってきた。統一教会は、霊感商法や身ぐるみ献金の詐欺的収奪による巨万の資金力をもって、右翼反動反共政治と動員力集票力の基盤となってきたのだ。その反共犯罪集団の統一教会から、搾り取られ、貧困と家族崩壊・人格破壊を強いられてきた山上容疑者などの被害者は膨大に存在する。この根深い階級支配の犯罪的暗黒部が満天下に暴露されたのも、安倍銃殺事件の政治的本質なのである。


●3章 革命的左派の任務とこれからの闘い


▼階級情勢と左派の路線的課題

 参院選で焦点の一つとなった暮らしと賃金、貧富格差の現状を簡単に押さえることとする。アベノミクスとそれを継承する岸田政権の下で、富裕層、大企業=独占資本の儲けや資産・所得は増大し続けている。上場企業では、二二年三月期決算で、一億円以上の役員報酬を得る者は、前年比一一九人増の六六三人、総額一四五三億二八〇〇万円(前年比33%増)である。一二年から二〇年にかけて大企業の内部留保は一三〇兆円増え、四六六兆円となった。家計が保有する金融資産は、富裕層へと一段と集中している。家計資産の上位10%の世帯が得る利子と配当金収入は、一九年では全体の約60%となり、五年前の54%から明らかに上昇している。
 他方、一九九四年から二〇一九年の二五年間で、三五~四四歳では、年間所得が一〇四万円も減った。四五~五四歳も一八四万円減っている。四割を超える非正規雇用労働者は、若者と女性に圧倒的に多い状況だ。年収二〇〇万円以下のワーキングプアは、二〇〇〇万人を超え、増えている。日本社会において貧困(相対的貧困。年所得の中央値の半分以下の世帯)は、七人に一人が陥る状態にある。
 階級矛盾は深刻にして増大し、革命的左派には、非正規雇用労働者など相対的下層労働者を組織化し、階級的労働運動建設を進めることは路線的な大きな課題である。加えて、被抑圧人民、被差別大衆の解放闘争、青年学生の決起と団結を構築することも決定的に重要である。こうした新たな階級闘争構造、その拠点建設は、中長期の闘いとして要請されている。
 革命的左派にとって、この戦略的事業の実際の闘いに立ち遅れ、労働者人民を個々バラバラの閉塞状態に放置することは許されない。それ故に、新たな階級闘争構造とその拠点づくりは、日帝の改憲・戦争攻撃や差別排外主義と闘い、プロレタリア国際主義と大衆的実力闘争、左派共闘の強化と繋げていかなくてはならない。左派の綱領的目標は、内外で噴出する資本主義的基本矛盾の深刻化を革命的に変革すること、即ち国際主義に立脚した日帝打倒―プロレタリア社会主義革命の闘いというのが決定的に重要な任務である。そのための今後の闘いについて、以下に訴える。


▼岸田政権打倒の全人民的闘争を

①内閣支持率の急落
 参院選後、岸田政権の支持率が急落している。八月上旬の世論調査では、選挙前の約57%前後の岸田内閣支持から、十数ポイント急落し、46%の支持、不支持は34%という数字が時事通信で報道された。主な理由は、次の点にある。①インフレ・物価上昇が全人民の生活を直撃し、賃上げどころか、2%前後の実質賃下げなど、生活苦が深まっていること。②安倍国葬が国会審議も無く閣議決定され、その莫大な葬儀費用に税金を注ぎ、反人民的で戦争攻撃・反動・貧困・差別そして疑獄や公文書改竄など犯罪に満ち満ちた安倍政治への賛美と追悼・弔意が全人民に強制されることに対する反対世論である。③自民党と反共犯罪集団=統一教会の構造的な癒着が満天下に暴露されていることが挙げられる。
 岸田自公政権に対する参院選挙の結果の大勝は、うわべの表層でしかない。全人民の生活苦・階級的な憤激と怒りが根底から徐々に広がっている。噴き出し始めた岸田政権の危機は、岸田自らが延命のためには、解散・総選挙か人事の一新しかないとまで言わしめ、内閣改造が断行された。当初九月予定の岸田内閣改造―第二次政権は、八月一〇日に組閣された。それは、自民党と反共犯罪集団=統一教会の腐りきった癒着構造を隠蔽し、今後の日帝―岸田政権の重大な階級攻撃の方針を打ち出したものである。
 これまでの統一教会と繋がりを持つ萩生田光一や岸信夫、野田聖子など七人の閣僚を交代させ、形式的に関係の「見直し」や「絶つ」ことを欺瞞的に演出している。だが、自民党極右勢力の安倍派などは、統一教会の約一〇万の票や選挙の動員・展開力や改憲、夫婦別姓反対の政治キャンペーン牽引力を重要な戦力として保持してきた。関係を絶つこと等、絶対にできず、むしろ統一教会と自民党は右派国家主義の政治的思想的立場で一体的癒着構造がある。萩生田を安倍無き安倍派の中心幹部として、党の政調会長へと起用するなど極右・安倍派=清和会系や無所属の高市早苗を岸田政権の閣内や党人事で重要ポストに就かせている。新閣僚でも、寺田総務相、加藤厚労相、山際経済再生相など少なくとも四名が、さらに副大臣・政務官で一七名以上が、統一教会との癒着していることも明らかとなった。

②改憲・大軍拡に突き進む第二次岸田内閣
 第二次岸田改造内閣は、「防衛力強化」を全面にかかげ、コロナ感染拡大、ウクライナ情勢、米中対立など、「有事に対応」する「政策断行内閣」とぶち上げた。その要は、参院選勝利の直後に宣言した「改憲の早期実現」と一体化したものなのである。改憲・戦争、そしてインフレ・物価高やコロナ拡大などによる生活破壊、さらには安倍国葬問題を巡って、即ち歴史的な階級攻撃との攻防は激しくなっている。各種の世論調査では、岸田の「決断と実行」や「丁寧な説明」などは「検討」「先送り」「曖昧化」などと全人民から問題視され、岸田への不満や批判が充満し、先の支持率急落に繋がった。
 いまこそ、左派勢力は、生活苦や憤激を深める労働者人民に依拠し、かつ結合を強め、改憲阻止―岸田政権打倒の全人民的な政治闘争ならびに差別分断を打ち破る国際主義に立脚した階級闘争の再構築こそが求められている。左派勢力は、この一点で、大義ある共闘や行動を拡大し、闘っていく歴史的局面にある。労働者、被抑圧人民、被差別大衆の解放闘争、青年学生の決起、これを差別排外主義ファシスト勢力粉砕やプロレタリア国際主義の行動でいっそう内実あるものへと牽引しよう。左派勢力の勢いある闘いや意欲的な街頭行動に決起していこう。
 第二次岸田内閣の打倒にむけた全人民の決起と闘争は、次の主な課題を進めることである。
 第一には、改憲攻撃を粉砕し、戦争攻撃・日米軍事同盟・軍事基地強化の反対闘争を強化していくことである。岸田政権は、統一教会と自民党の一体的癒着構造に批判を浴び、政権そのものの危機を抱え、追い詰められている。統一教会=国際勝共連合の改憲草案は、自民党の改憲案とほとんど同じである。即ち、①緊急事態条項の新設、②家族観を国家主義・天皇制強化の内実で再編すること、③九条改憲を狙って「自衛軍」「国防軍」を九条に明記すること、などである。岸田政権が改憲の国会発議をまとめることや改憲案の国民キャンペーンを進める上で、反共犯罪集団=統一教会の政治力量・部隊力は大きな推進力なのだ。統一教会は、右翼・日本会議とともに改憲推進の両輪を構成するのだ。しかし全人民の激しい拒否感の前に、自民党の犯罪的な弱点が露呈した。
 九条改憲=戦争国家化は、参院選で信任されたわけでは全くない。九条改憲の先取り攻撃が日米軍事同盟と軍事演習・軍事基地強化による実際の憲法破壊として既成事実化されてきている。しかし、その攻撃の現場となっている沖縄・辺野古新基地建設阻止―普天間基地撤去、琉球弧への自衛隊配備強化反対、「本土」の岩国、築城、京丹後、横田、神奈川など反基地闘争の展開など、反戦平和、核兵器廃絶などを含めて、全人民的な抵抗闘争が粘り強く繰り広げられている。改憲阻止―岸田政権打倒にむけて、反戦反基地、反改憲、反共犯罪集団=統一教会解体の闘いを連関させ、全人民の政治闘争を燃え上がらせていく絶好の機会である。断固として、闘っていこう。
 第二には、9・27安倍国葬反対闘争を大高揚させ、安倍政治を断固として断罪していこうではないか。歴代最長の安倍政権は、反人民と反動、差別排外主義、犯罪に彩られている。安保法制=戦争攻撃、天皇制賛美、新自由主義=弱肉強食社会への転換と「自己責任」を強要した。森友・加計・桜を見る会などの腐敗利権と権力私物化を進め、韓国・朝鮮民主主義人民共和国・中国への敵対と排外主義など、安倍政治は全人民の闘いによって糾弾され断罪されなくてはならない。安倍国葬に反対する全人民の巨万の決起をつくり出していこうではないか。岸田政権は、安倍国葬を国会審議すること無く閣議決定した現在の日本の法体系では、そもそも国葬を行う法的根拠がない。巨額の税金を注ぎ、安倍の一連の反動反人民の強権政治に反対する世論を封殺し、追悼と弔意を国家主義的に強要し動員する許しがたい歴史的暴挙である。安倍国葬反対の大闘争によって、岸田政権打倒をかち取っていかなくてはならない。全国各地で安倍国葬反対の大闘争を巻き起こしていこう。
 第三には、物価高など労働者人民の生活破壊を阻止していくことである。労働者人民の大幅賃上げ・最賃一五〇〇円の実現や、コロナ禍における生活保障を要求し、労働者人民への減税と大企業・金持ちへの増税強化を闘うなど、生活破壊阻止―岸田政権打倒を闘おう。これらに関して、労働者人民解放にむけて、左派労組など大衆諸組織で担っていこう。
 八月に出された最賃の答申では、全国加重平均で「三一」円アップの目安でしかないなど、まったくのでたらめである。Aランクの東京都で一〇四一円から一〇七二円へ、Dランクの最安の沖縄と高知県では八二〇円から八五〇円というのだ。全国一律一五〇〇円という左派労働運動の要求を真っ向から踏みにじっている。この間、三〇年間も労働者の賃金水準が凍結され、強搾取収奪され、物価上昇で実質賃下げが三か月続く状況に対して、岸田政権は微増の賃上げしか示さず、金融投資を促進するだけなのだ。ますます格差拡大=階級矛盾の深刻化を露呈するだけである。まったく許すことが出来ない。
 最後にまとめると、労働者、被抑圧人民、被差別大衆の解放闘争や青年学生の決起と団結といった新たな階級闘争構造の建設を進め、三里塚闘争・沖縄解放闘争・狭山闘争など全人民的な政治課題を断固担い、反資本主義・反帝の左派共闘を広め、AWCなど大衆的な反帝国際主義を取り組み、安倍国葬粉砕・改憲阻止―岸田政権打倒の二〇二二年後半戦へ決起しよう。



 


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